番号11021-15
画題木偶(でく)の坊(ぼう)
揃い物日本萬歳百撰百笑(ひやくせんひやくせう)
揃い物の解説50枚
判型大判
絵師小林清親
落款清親
清親
年号明治27年
板行年月1894年12月
板元松本平吉
詞書き木偶(でく)の坊(ぼう)        骨皮道人

「花園口(くわえんこう)だの旅順(りよじゆんこう)だのと、大(おほ)きな口(くち)を幾個(いくつ)も持(も)つて / 居(い)ながら軍(ぐん)とも守(しゆ)うとも云(い)う事(こと)が出来(でき)ないとハ、 / 如何(いか)に木偶(でく)の坊(ぼう)とハ云(い)へ餘(あんま)り活智(いくち)が無(な)さ過(すぎ)る。 / 是(これ)が世(よ)に云(い)ふ娑婆塞(しやばふさ)ぎだ、此様(こん)な案山子(かかし)にも / 劣(おと)るやうなものを、此侭(このまま)打棄(うちすて)て置(おい)てハ文明人(ぶんめいじん) / の通行(つうこう)する妨(さまた)げだ、オヤ今(いま)まで此處(ここ)に豚尾人(とんびにん) / 足(そく)が大勢(おほぜい)居(い)たやうだつけ、自己(おれ)の姿(すがた)を見(ミ)ると / 皆(ミん)な何所(どこ)かへ逃(にげ)て仕舞(しまつ)たぞ。ヨシヨシ斯(こう)なりや / もう此方(こつち)の物(もの)だ。思(おも)ふ存分(ぞんぶん)に片(かた)ッ端(ばし)から打(ぶつ) / 潰(つぶ)して遣(やる)からさう思(おも)へ。ハテナ何所(どこ)から 取掛(とりかか)らう、全体(ぜんたい)此奴(こやつ)ハ脳味噌(のうミそ)もない癖(くせ)に / イヤに頭(あたま)を持上(もちや)げたがるから先(ま)づ手初(てはじ)めに / 頭(あたま)こなしと行(いつ)て、夫(それ)から此奴(こやつ)ハ又(また)餘(よ)ほど鉄面皮(てつめんぴ) / だからズルズルズルと面(つら)の皮(かわ)をヒン剥(むい)て、今度(こんど)ハ斯(こ)う / 此(この)旅順口(りよじゆんこう)をミリミリミリ」と頻(しきり)に威勢(いせい)よく打毀(ぶちこわ) / して居(い)ると、流石(さすが)に無神経(むしんけい)の木偶(でく)の坊(ぼう)も、 / 旅順口(りよじゆんこう)を奪(うば)ひ取(とら)れたのにハ閉口(へいこう)したと見(ミ)へて/ 鉄砲玉(てつぽうだま)のやうな涙(なみだ)をポロリポロリと溢(こぼ)しながら /「 ァ - 口おしい」
描写日本兵士が、中国風書机の前に置かれた大きな木彫りの清国人形の口の部分を、棒で叩き壊している。
解説この揃い物の画題の「百撰百笑」は、「百戦百勝」の語呂合わせである。清親は、日清戦争のプロパガンダ戯画の本シリーズで、敵国清国人を徹底的に卑下して描いている。この版が出版された12月には、日本軍はすでに遼東半島の旅順と大連を占領していた。画題の「木偶の坊」は「ものの役に立たない馬鹿」という意で、人形は清国総大将の李鴻章を型どり、占領された旅順港を旅順口と語呂合わせにして、人形の口の部分を粉々に破壊している日本兵が描かれている。詞書きの最後の言葉「口おしい」は、人形の壊された「口がもったいない」を旅順港を占領されて「悔しい」に懸けている。
所蔵国立歴史民族博物館
画像提供個人
絵種戯画, 日清戦争絵, 風刺画
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