番号11021-30
画題袋(ふくろ)の鼠(ねずミ)
揃い物日本萬歳百撰百笑(ひやくせんひやくせう)
揃い物の解説50枚
判型大判
絵師小林清親
落款清親
清親
年号明治28年
板行年月1895年4月
板元松本平吉
詞書き袋(ふくろ)の鼠(ねずミ)  骨皮道人
猫(ねこ)に遂(お)はれた腰抜(こしぬけねずミ)が、餘ほど途方(とはう)に暮(くれ)たと / 見(ミ)へて、思案(しあん)も分別(ふんべつ)も出(で)れバこそ忠々(ちうちう)と云(い)ふのハ / 唯(ただ)ほんの口(くち)の先(さき)ばかり、其実(そのじつ)忠臣(ちうしん)らしい者(もの)/ ハ一疋(いつぴき)も居(を)らぬ 甲「実(じつ)に是(こ)れ危窮損毛(ききうそんもう) / の秋(とき)で御座る、斯(かく)なる上(うえ)ハ最早(もはや)尻尾(しつぽ)を下(さげ) / て、何(いづ)れへなりとも一生懸命(やうけんめい)に逃出(にげだ)すより外(ほか) / に手段(しゆだん)ハ御座(ござ)るまい 乙「是(これ)ハ甲鼠君(こうそくん)のお詞(ことバ)とも / 心得(こころえ)ぬ、窮鼠(きうそ)却(かへつ)て猫(ねこ)を喰(は)むチウ事(こと)もあれバ、/ 喩(たと)ひ此(この)身(ミ)ハ頭(あたま)から武者武者(むしやむしや)と齧(かぢ)らるるとも/ 丙「御詞(おことバ)のチウだが夫(それ)ハ併し猪武者(いのししむしや)なら知(し)らぬ / 事(こと)迚(とて)も我々(われわれ)鼠輩(そはい)の及(およ)ぶ所(ところ)でハ御座(ござ)らぬ、夫(それ)/ よりハ矢張(やはり)君子(くんし)ハ危(あやう)きに近寄(ちかよ)らずで、先(ま)づ命(いのち)/ を助(たす)かる工夫(くふう)を附(つけ)た方(はう)が上策(しやうさく)で御座(ござ)らう、イヤ夫(それ) / でハ何(なん)だの是(これ)でハ斯(こう)だのと、頻(しきり)に小田原評議(おだはらひやうぎ)を / して居(い)る所(ところ)へ、ニヤーンだァと大喝一声(だいかついつせい)、大猫(おほねこ)に / 飛込(とびこん)で来(こ)られたから、窮鼠(きうそ)ハ孰(いず)れも狼狽(ろうばい)し / て、矢庭(やにハ)に袋(ふくろ)の中(なか)へ飛込(とびこ)んだ、猫(ねこ)ハ夫(それ)と見(ミ)るより / 跡(あと)を追掛(おつかけ)て行(ゆ)くと、其(その)袋(ふくろ)にハチヤンと熨斗(のし)が / 附(つい)て、其(その)上書(うわがき)に粗支那進上(そしなしんじやう)
描写日本の旗を付けた猫の形をした軍艦に追いかけられて、鼠の形の軍艦二隻が、袋の中に逃げ込んでいる。袋の上には熨斗がつけてあり、「粗支那」「砲台燈台軍艦十六隻大砲小銃軍旗其他米粟も御座候へバ御分捕の程奉願候 清国屋」と書かれている。
解説この揃い物の画題「百撰百笑」は「百戦百勝」の語呂合わせである。清親は、日清戦争プロパガンダ戯画の本シリーズで、敵国清国人を徹底的に卑下して描く。本図が版行された1895年4月には、日本軍の圧勝で、1.清は朝鮮の独立を認める。2.清は遼東半島・台湾・澎湖諸島を日本に譲渡する。3.清は賠償金2億両(3億円)を金で日本に支払う。等清に非常に不利な条件の日清講和条約が調印された。詞書きでは、その日本と清国の状況を、猫に追われて絶体絶命の鼠にたとえて語り、猫と鼠の鳴き声をつかって言葉遊びをしている。鼠の逃げ込む袋には、「粗支那(粗末な品)ですが、すべての軍事設備、銃と軍旗、食糧のなにもかも分捕ってくださいお願いします」と書き、清を国ではなく「清国屋」という店にして徹底的に貶めている。
所蔵国立歴史民族博物館
画像提供個人
絵種戯画, 日清戦争絵, 風刺画
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